本を売る期限を決める

本は必ず売り残ります。時聞が経過するほど売れ行きが鈍ることもわかっています。そこで大事なのは、何割売ったところであきらめるかという時期を設定することです。

実際にある用の仕入れ品の八割を売るまでに、どれくらいの時聞がかかるでしょうか。二年かかるとしたら、残りはあきらめるようにする。あるいは、八割を売ったところで、残りの二割をあきらめるようにするなど、期限を決めてみるのです。実際、二割という数字が妥当かどうかは判断が分かれるところですが、売れ残りが五割を超えるようなら、経営はかなり苦しいでしょう。ここでは当然、売ることをあきらめた売れ残りをどうするかという問題が出てきます。いちばんいいのは市場に出すことです。もともと市場で売り買いする値段よりも安く買っているはずですから、市場に出して処分すれば損はしないはずです。

けれども実際には、売れ残りを出品してもあまり買い手がつかず、安く落札される場合も少なくありません。売れ筋が入っていないということはみんな見当がつくので誰もほしがりません。しかしそれでも、市場に出せばいくらかにはなります。また、場合によっては廃棄することも必要です。出版社は製造業者ですから、そのとき必要な最大限の量を供給しようとします。たいていの製品は作られたときが最も需要が多い時期なので、時間の経過とともにある程度減らしていかないかぎり、中古市場は供給過多になっていきます。消耗品などであれば自然に減っていきますが、本は何十年も残るものです。誰かが意図的に減らさないかぎり、ずっと供給過多の状況が続いて、値が付かなくなってしまいます。

例えば、七百万部以上売れた黒柳徹子『窓ぎわのトットちゃん』(講談社、一九八一年)は、日本中に七百万冊あるわけです。本は捨てないかぎり数が減りません。焼けたり破けたりしたごく少数を除いて、おそらく七百万部のほとんどがいまでも残っているでしょう。それらすべてが次の世代に受け継がれていくことになるわけですが、いったいそんなことが可能でしょうか。出版時に刷られた冊数でなく、現在必要とされる量まで本の数を減らすことも、ある意味で古本屋の重要な仕事なのです。何をどれだけ廃棄すべきかは古本屋が恋意的に判断することではありませんが、あり余るものはどうやっても売れません。したがって、ある時期がきたら古紙として処分するしかないのです。お客様と古書店とのやりとりのなかで、おのずとその時期は決まります。古本屋はそうした歴史が実現する場所でもあるのです。

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